執筆者紹介
証券アナリスト・中島 翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。
その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。
その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。
さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。
仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト
2023年12月の仮想通貨市場の流れを解説
12月の仮想通貨市場は、全体的に上昇傾向となり、特に「ビットコイン(BTC)」および「ソラナ(SOL)」の上昇が目立ったほか、「イーサリアム(ETH)」が2023年の高値を更新する展開となった。
では、12月の仮想通貨市場を週ごとに振り返ってみよう。
12月の第1週は、BTCが引き続き堅調な動きを見せ、ドル建て円建てともに年初来高値を更新した。
週初の仮想通貨市場は引き続き上昇基調となり、BTCは40,000ドルを上抜けるかたちでのスタート。
5日には、世界最大の資産運用会社「ブラックロック(BlackRock)」と仮想通貨投資会社「ビットワイズ(Bitwise)」がビットコイン現物ETFの申請資料の修正版を提出したことが明らかになったほか、ロイター社の報道により、ビットコイン現物ETFの上場承認を目指す資産運用13社と「米証券取引委員会(SEC)」との協議が大詰めを迎えており、SECが近く承認を出す可能性があることが明らかになったことなどから、BTCは42,000ドル台半ばまで上昇する展開に。
さらに、同日の米国時間には「雇用動態調査(JOLTS)」が予想を大きく下振れたことから米国債利回りが低下し、BTCの価格は44,000ドル台まで伸びる動きを見せ、そのままドル建て、円建てともに年初来高値を更新することとなった。
2023年12月第1週の仮想通貨市場
第1週における注目すべきニュースとしては、フランスの大手銀行「ソシエテ・ジェネラル」が、イーサリアムネットワーク上で初となる、トークン化された「グリーンボンド」を発行したことなどが挙げられる。
2023年12月第2週の仮想通貨市場
12月の第2週は、大規模なロングポジション清算や仮想通貨懐疑派議員による規制法案の提出などによって市場全体が下落する展開となった。
週の初めには、市場全体でおよそ3.1億ドルのポジションが清算されていることが確認され、仮想通貨全般が急落する格好に。
その後は、一時反発を見せたものの、仮想通貨懐疑派として知られるエリザベス・ウォーレン米上院議員がロジャー・マーシャル議員と連名で「仮想通貨マネロン防止法案」を議会に提出したことから再び安値を試す展開となり、BTCは40,000ドル付近をサポートとして推移することとなった。
また、15日には、「米国証券取引委員会(SEC)」が「コインベース(Coinbase)」の新しい仮想通貨規制に関する要求を拒否し、既存の法律が仮想通貨にも適用されると主張したことを受けて、仮想通貨市場は再び全体的に失速する展開となった。
第2週における注目すべきニュースとしては、ハードウェアウォレット「レッジャー(Ledger)」の「Dapps(分散型アプリケーション)」接続部分をターゲットとしたハッキングが発生し、およそ50万ドルの資金が流出したこと、また、「米国商品先物取引委員会(CFTC)」のロスティン・ベーナム委員長が、改めて「現行法の下では、仮想通貨トークンの多くは商品(コモディティ)だ」と強調したことなどが挙げられる。
2023年3月第1週の仮想通貨市場
12月の第3週は、「ソラナ(SOL)」が前週比で+39.89%を記録するなど、アルトコインが優れたパフォーマンスを見せることとなった。
19日に「アーク・インベストメント(ARK Investment)」とブラックロックがそれぞれETF申請の修正案を再提出したことが報じられると、最後の関門を突破したとの見方からBTCは42,000ドル台半ばまで上昇する展開に。
さらに、その翌日には、ハッキング被害が発生したレッジャー社が被害の全額補償を発表したことなどから、BTCは43,000ドルを上抜け、そのまま44,000ドル台まで上昇することとなった。
このほか、週の半ば辺りからは「イーサリアム(ETH)」や「ソラナ(SOL)」といったアルトコインがいいパフォーマンスを見せた。
ETHについては、次期アップグレード「Dencun」の実施予定時期などに関する発表があったことから上昇を見せ、イーサリアムレイヤー2銘柄にも買いが集まった。
一方、SOLについては、ソラナブロックチェーン対応のスマートフォン「Saga」の完売、ソラナブロックチェーンの「Phantom Wallet」がBTCネットワークに対応、米Web3決済サービスプロバイダー「パクソス(Paxos)」がソラナブロックチェーン対応を発表といったさまざまな好材料から、前週比で+39.89%を記録し、ドル建ての価格は2022年4月以来の100ドル台を付ける展開となった。
また、SOLは年間でも984%という群を抜く上昇を見せており、今後の動きに注目が集まっている。
2023年12月第4週の仮想通貨市場
12月の第4週は、ETHが2023年の高値を更新する結果となった。
週の前半の26日には、米仮想通貨投資会社「グレースケール(Grayscale)」がSECへの新たな修正案で「Cash only」のビットコインETFモデルを採用すると報告したことなどを受けてBTCが一時上昇したが、その後は年末にかけて徐々に下落し、31日には42,152.1ドルを付けた。
このほか、イーサリアムのL2「Blast」が、正式なローンチ前にも関わらず、入金額が11億ドル(1,550億円)相当まで増加していること、また、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が、イーサリアムの合意形成の仕組み「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」を簡素化する提案を行ったことなどから、ETHの価格が一時2,380ドル辺りまで上昇し、2023年の高値を更新する展開となった。
なお、今回の変更が実現すれば、合意形成の実行が非常にシンプルになり、ネットワークが大幅に軽くなるということだ。
第4週における注目すべきニュースとしては、BTCのマイナーが28日前後の24時間で3,000BTC以上(180億円相当)を売却したこと、また、大手仮想通貨取引所「OKX」が29日、ほぼ全ての匿名通貨を廃止する予定を発表したことなどが挙げられる。
市場の動向をチャートでチェック
BTCUSDチャート
12月初に37,718.01ドルでスタートしたBTCは、ビットコイン現物ETFの上場が間もなく承認されるという見方が広まったこと、また、「雇用動態調査(JOLTS)」が予想を大きく下振れたことなどから、44,000ドル台まで上昇し、年初来高値を更新する展開に。
その後は40,000ドル辺りをサポートラインとして推移し、アーク・インベストメントとブラックロックがそれぞれETF申請の修正案を再提出したと報じられると、再び43,000ドル台まで反発し、そのまま44,000ドル台まで上昇した。
月の終わりには、11月の「米個人消費指数(PCE)」が下振れ、早期利下げ観測が高まったものの、仮想通貨市場には追い風とならず、最終的には42,000ドル台で推移することとなった。
ETHUSDチャート
12月初に2,052.1ドルでスタートしたETHは、ビットコイン現物ETF関連の話題やイーサリアムネットワーク上でのグリーンボンドの発行などを受けて上昇し、2,300ドル台で推移する展開に。
その後は、2,200ドル辺りを行き来していたものの、イーサリアムの開発者らが実行レイヤーのミーティングを開催し、次期アップグレード「Dencun」の実施予定時期などについて議論したことが報告されたことから、2,380.2ドルまで上昇した。
また、現時点では、Dencunをメインネットで実施するのは2024年2月の終わり頃になるとみられており、今後は「Goerli」、「Sepolia」、「Holesky」の3つのテストネットにおいてDencunのテストを実施するということだ。
さらに、その後はL2「Blast」やPoSの簡素化などの話題も相まって、ETHは一時2,380ドル辺りまで上昇し、2023年の高値を更新する展開となった。
なお、アップグレードに向けた動きはETHの価格にもいい影響を与えると期待されるため、今後の動向に引き続き注目していきたい。