執筆者紹介
証券アナリスト・中島 翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。
その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。
その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。
さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。
仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト
10月の仮想通貨市場の流れを解説
10月のビットコイン市場トレンド
10月は仮想通貨市場は、ビットコインの最高値更新、ビットコイン先物ETFの上場、犬コインの急上昇で時価総額の9位にSHIB、10位にDOGEが入るなど、トピックスが比較的多かった月となった。
まずは10月の仮想通貨市場の全体の流れを、ビットコイン相場をベースにおさらいしてみよう。
ビットコイン市場では8月中旬にハッシュリボンが点灯し、9月7日にはエルサルバトルのビットコイン購入のニュースをきっかけに直近最高値である52,945ドル付近まで上昇、下旬には中国政府による仮想通貨取引の禁止などで下振れする場面もあったが、40,000ドル前半のサポートに支えられながら推移をした。
しかし、9月30日にはアメリカのSECゲンスラー委員長によりビットコインETFに関して肯定的とも捉えられる発言があった結果、価格は大きく戻す形となり、パウエル議長も仮想通貨を禁止するつもりはないという趣旨の発言を行ったことが、ビットコインの価格を後押しする格好となり、弾みをつけた形で10月のビットコイン相場が始まった。
10月のビットコイン市場の流れは、大局的には10月1日にから10月20日までは上昇、10月20日には66,999ドルの史上最高値を更新し、そこから調整、反発に入り57,000ドル後半のサポートに指示されて11月へと入った。
次に上昇相場が一段落した日に何が起こったのかをファンダメンタルズを中心に解説したい。
まず、10月6日に56,000ドル手前まで上昇した後、10月7日には50,000ドルからの半値戻しである53,000ドルで小休止を見せたが、今回の10月5日の50,000ドル突破は、大口の現物投資家の買いが入っていたことが要因となっており、急な売り要因とはならず、57,000ドル後半のレジスタンスと53,000ドル後半のサポートに挟まれたレンジを経て、10月15日に60,000ドルを突破し一段高となった。
10月前半の市場の関心は米国で初となるビットコイン先物のETFが承認されるかという点であった。
承認延期の憶測もあったが、10月15日頃には10月18日の承認期待が高まり上昇圧力となった模様。
実際10月19日にはプロシェアーズ(ProShares)社のビットコインETF(BITO)がニューヨーク証券取引所(NYSE)のArcaに上場、初日の出来高が1,000億円を超え、数日で先物建玉制限を突破しそうになるなどし、ビットコインの価格も一時4.5%高の66,976ドルまで上昇、史上最高値を更新し、年初来では約220%の上昇を果たした。
今回のビットコイン先物ETFは、現物のビットコインのように仮想通貨取引所ではなく、証券市場において取引される金融商品の事で、仮想通貨取引所よりも資産の安全性や透明性が求められる証券取引所で取扱いが行われるため、投資家にとっても投資しやすい環境での取引が行えるようになる。
一方で証券取引所への上場はSEC(証券取引委員会)の審査が厳しく、ビットコインETFは成熟性と市場の監視を問題視し、SECは何度もビットコインETFの申請を却下してきたが、今回は8年をかけて様々な仮想通貨関連企業などがチャレンジしてきたビットコインETFの上場が実現した歴史的な日ともなった。
先物ETF要因による上昇は10月20日までとなり、その後は57,000ドル後半まで下落、再びレンジに入り11月へと引き継いでいる。
犬コインの急上昇
ビットコイン反落の動きと呼応するかのような動きを見せた仮想通貨がSHIBA INU(SHIB)だ。
10月23日に0.00002794ドルでスタートしたSHIBは10月28日までのわずか5日間で0.00008894ドルと3倍以上上昇し、時価総額も全体の9位に入る躍進を見せた。
また、ライバル通貨であるDODGも10月28日に1日で約25%の上昇を見せ、時価総額10位に入っている。
これらの所謂「犬コイン」はmeme coinといわれるジョークコインであるが、SHIB上昇のファンダメンタルの背景としては、オンライン署名サイト「change.org」においてアメリカ最大のオンライン証券であるロビンフッドにSHIBの上場を求める署名が33万4500人分集まったことがきっかけであったと推測されるが、直接的なビットコインを利確した個人投資家の動きも今回の上昇に一役買ったと推測される。
10月のイーサリアム市場トレンド
次にイーサリアムの10月の動きを振り返ってみたい。
イーサリアムに関しては、日足のトレンドラインに綺麗に沿う形で上昇し、10月27日に一時トレンドラインをブレイクしたが200日線にサポートされ、再び上昇トレンドに回帰している。
ここ数ヶ月目安とされていた4,000ドルはビットコインが最高値を更新した10月20日に突破し、 10月29日は史上最高値である4461.96ドルを付けた。
その際のファンダメンタルの要因としては、PoSへのコンセンサスアルゴリズム移行に重要なポイントとなる「Altair」のビーコンチェーン上での実装に成功した点が挙げられる。
イーサリアム2.0へのアップデートは1年以上かけて行われるが、順調に推移しているため、今後もイーサリアムの価格を下支えする要因となりそうだ。
市場の動向をBTCUSDチャートでチェック
最後にBTCUSDのチャートをチェックしたい。
9月下旬頃から機能していた40,000ドル後半のサポートラインは9月29日を最後に10月5日には50,000ドルを突破、フィボナッチリ・リトレースメント50.0%のサポートに支えられた小休止の後、ボリンジャーバンド3σに迫る勢いで6日には55,000ドル後半まで続伸、その後は9月7日の最高値である53,000ドル前半でサポートされ、ビットコインETFの上場承認をきっかけに10月20日にそれまでの最高値であった64,899ドルから66,999ドルへと5,100ドルの高値更新をしている。
史上最高値更新後の反落に関しては一旦はフィボナッチリ・リトレースメント78.6%ラインをサポートに跳ね返された形となっているが、10月27日より200日線を割り込み、200日線にまとわりつきながら推移している状態である。
10月以降は株式市場含めて11月の外資系の中間決算がある中旬あたりまでは上昇しやすい地合いになることから、ビットコインも上昇地合いで推移すると考えていたが、概ね想定通りの展開を見せたと言える。
短期的にはビットコインの押し目を作るなら56,000ドル付近という目線であるため、しばらくは慎重にトレードするスタンスで構えていく。
続いてイーサリアム(ETH/USD)のチャートをチェックしたい。
イーサリアムの10月前半のチャートの動きとしては、直近最高値よりおおよそ300ドル程度の反発で大きな反発なく上昇し、後半の動きは9月29日の安値と10月13日のトレンドラインに綺麗に沿った形で推移した。
チャートポイントとしてはフィボナッチリトレースメントが機能し、特に61.8%ライン付近と78.6%ラインがサポートとして機能。
200日線タッチは10月28日の1回に留まるのみである。
今後イーサリアムに関しては、イーサリアム2.0へのアップデートの進捗具合と、ビットコイン先物ETFのように、イーサリアムのETFが承認されるかどうかという点に影響を受けそうであるが、基本的には押し目買いのスタンスでトレードしていきたいと考える。