必死に危険を回避したのもつかの間、新たな問題に困ってしまう人はたくさんいます。
ファクタリングは比較的新しいサービスだからこそ、会計処理のやり方がまだまだ一般的ではありません。
「どの勘定科目を使えばいいのか」、「貸借対照表はどうなるのか」など、わからないことは盛りだくさん。
そこで今回は、ファクタリングにおける仕訳け方についてわかりやすく解説します。
「仕訳の方法がわからなくて、本業に手が回らない…」なんてことにならないよう、サクッとおさえておきましょう。
- ファクタリングをした際につかう勘定科目は未収金・売上債権売却損
- ファクタリングにおける消費税の扱いは、譲渡代金・手数料ともに非課税
- ファクタリングにおける仕訳は以下の3段階で考える
① 売掛債権が生じた際の仕訳け方
② ファクタリング契約時の仕訳け方
③ 売掛債権譲渡金の入金時における仕訳け方 - ファクタリングはROAを改善する反面、経常利益率を低下させる
会計処理の悩みを解決!ファクタリングの仕訳に使う勘定科目とは
と頭を抱える人は、珍しくありません。
売掛債権の売買であるファクタリングは融資を受けた際に使う勘定科目とは異なります。
ファクタリングの仕訳において使われる勘定科目は以下のとおりです。
- 未収金
- 売上債権売却損
上記の勘定科目について解説します。
仕訳に使う勘定科目① 未収金
未収金とは、将来的にもらえるお金を意味する勘定科目。
売掛金と似ていますが、未収金は本業で発生した利益を指すところが違いです。
ファクタリングは売掛債権の売買にあたり、本業の収益とは異なるとみなされるため、未収金で仕訳をします。
ただし、即日入金してくれるファクタリング会社の場合は未収金は使いません。
仕訳に使う勘定科目② 売上債権売却損
売上債権売却損とは、売掛金を第三者に譲渡したときに生じる損失のこと。
ファクタリング手数料をあらわすときに使われる勘定科目です。
売上債権売却損は、会計ソフトによって異なる表記になることがあります。
以下のような勘定科目になっていることが多いので、探してみましょう。
- 売掛債権売却損
- 売上債権譲渡損
- 売掛債権譲渡損
ファクタリングにおける消費税の扱い
ファクタリングの仕訳をする際に迷うことが多い消費税の取り扱い。
譲渡代金や手数料に関して、どのように仕訳すればいいのかわかりやすく解説します。
譲渡代金・手数料は非課税
ファクタリングにおける入金額・手数料に消費税はかかりません。
小切手や手形、有価証券などと同様、ファクタリングは非課税取引にあたることをおさえておきましょう。
ファクタリングに消費税がかからない根拠
ファクタリングにおける売掛金の売買は、「金銭債権などの譲渡」となり、消費税が発生しません。
この根拠については国税庁のホームーページで詳細が確認できるので、以下もご覧ください。
1 概要
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行われる取引を課税の対象としています。
しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。2 主な非課税取引
(1) 土地の譲渡及び貸付け
土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。
ただし、1か月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。
(2) 有価証券等の譲渡
国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡
ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。
(後略)
なお、金銭債権の買い取りなどに関する課税についての質問に対する回答は以下となっています(該当部分のみ抜粋)
金銭債権の買取り等に対する課税関係
【照会要旨】
売掛金、貸付金等の金銭債権に関する次の取引は、どのように取り扱われるのでしょうか。
(2) 相手方から金銭債権を譲り受け、債務者から回収できるかどうかにかかわらず、金銭債権額から割引料、保証料又は手数料を控除して現金又は手形で支払います。【回答要旨】
(2)においては、金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料又は手数料は、その名目の如何にかかわらず、金銭債権の譲受対価として非課税となります。【関係法令通達】
消費税法施行令第10条第3項第8号
段階ごとに解説!ファクタリングの仕訳け方
そんな方のため、以下の条件でファクタリングをしたときの仕訳け方を解説します。
- 売掛金:100万円
- ファクタリング入金額:97万円
- ファクタリング手数料:3万円
以下の3つの状況ごとにおけるファクタリングの仕訳け方について、見ていきましょう。
- 売掛債権が生じた際の仕訳け方
- ファクタリング契約時の仕訳け方
- 売掛債権譲渡金の入金時における仕訳け方
仕訳け方① 売掛債権が生じた際の仕訳け方
まずは売掛債権が生じた際の仕訳け方についてお伝えします。
売掛債権が生じた際の仕訳け方
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 100万円 | 売上 | 100万円 |
この時点ではまだファクタリングによる債権譲渡をおこなっていないので、通常の仕訳と同じです。
なお、この仕訳では消費税がかかることにも注意しましょう。
仕訳け方② ファクタリング契約時の仕訳け方
ファクタリング契約を交わした際の仕訳は2パターンです。
基本的にはファクタリング契約をした翌日以降に入金されますが、なかには即日入金をしてくれるファクタリング会社も。
入金日が当日かどうかによって仕訳け方が異なるので、それぞれの会計処理をご紹介します。
ここで忘れてはいけないポイントが消費税の扱い方です。
先ほどお伝えしたとおり、ファクタリングは非課税扱いとなりますので、この点をおさえつつ見ていきましょう。
契約日以降に売掛債権譲渡金を受け取る場合
まずは契約日以降に売掛債権譲渡金を受け取るケースから。
この場合、借方の勘定科目として未収金を使います。
契約日以降に売掛債権譲渡金を受け取る場合の仕訳け方
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
未収金 | 100万円 | 売掛金 | 100万円 |
契約日以降に入金されるのは3社間ファクタリングが多いといわれています。
ファクタリングの申込者・ファクタリング会社・売掛先の3社での調整が必要となり、時間がかかるからです。
契約日に売掛債権譲渡金を受け取る場合
即日入金してくれるファクタリング会社の場合、勘定科目に売上債権売却損を使います。
契約日に売掛債権譲渡金を受け取る場合の仕訳け方
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 97万円 | 売掛金 | 100万円 |
売上債権売却損 | 3万円 |
勘定科目に未収金を使わない理由は、契約~入金までのスパンが短いからです。
先ほどお伝えしたとおり、未収金は将来的にもらえるお金を意味する勘定科目。
そのため、契約日当日に入金される場合は、売上債権売却損を使いましょう。
仕訳け方③ 売掛債権譲渡金の入金時における仕訳け方
最後に、契約日以降に入金される場合の仕訳け方を確認しましょう。
契約日以降に売掛債権譲渡金の入金されたときの仕訳け方
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 97万円 | 未収金 | 100万円 |
売上債権売却損 | 3万円 |
先述のとおり、ファクタリング手数料は売上債権売却損で仕訳をしましょう。
また、この仕訳も消費税が発生しない取引であることにも気を付けてくださいね。
ファクタリングの仕訳によるオフバランス化とは?
ファクタリング会社の仕訳をする際に知っておきたいオフバランス化。
貸借対照表を綺麗に見せる効果が期待できます。
その一方で、良くない側面もあるので注意が必要。
正しくファクタリングを活用できるための知識を深めていきましょう。
オフバランス化 = 貸借対照表の健全化対策
オフバランス化とは貸借対照表(バランスシート)に記載される項目を外す(オフする)ことで、会計処理を改善すること。
オフバランス化は合法的におこなうものですので、「危ないやり方なんじゃないか…」と心配することはありません。
わかりやすく解説するので、この機会にサクッとおさえておきましょう。
オフバランス化のメリットはROAが改善できること
ROAとは総資産のうち、どれだけの純利益があるのかを示すもの。
会社にあるお金をうまく活用して、いかに効率よく利益を出しているかがわかる指標です。
ファクタリングは債権譲渡によって素早く資金を調達するので、銀行融資のように負債を増やしません。
その分、ROAの改善効果が期待できます。
具体的には以下の事例を参考になさってください。
90万円の資金調達が必要な場合を想定し、ファクタリングと銀行融資のROAを比較しました。
ファクタリングで360万円の資金調達をした際のROA≒24.65%
24.65% ≒ 360 ÷ 1,460
(ROAの計算方法 = 純利益 ÷ 総資産)
- 資本金:1,000万円
- 買掛金:100万円(仕入れなど)
- 売掛金:500万円
- 利益:360万円(500万円-100万円-40万円)
- ファクタリングの手数料:40万円
上記の条件で360万円をファクタリングで調達すると、貸借対照表は以下のようになります。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,460万円 | 買掛金 | 100万円 |
資本金 | 1,000万円 | ||
利益余剰金 | 360万円 |
銀行融資で360万円の資金調達をした際のROA≒21.50%
21.50% ≒ 400 ÷ 1,860
(ROAの計算方法 = 純利益 ÷ 総資産)
- 資本金:1,000万円
- 買掛金:100万円(仕入れなど)
- 売掛金:500万円
- 利益:400万円(500万円-100万円)
- 借入金:360万円
上記の条件で400万円を銀行融資で調達すると、貸借対照表は以下のようになります。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,360万円 | 流動負債 | 360万円 |
売掛金 | 500万円 | 買掛金 | 100万円 |
資本金 | 1,000万円 | ||
利益剰余金 | 400万円 |
このようにファクタリングを利用すると、ROAが改善できるというメリットがあります。
オフバランス化のデメリットは経常利益率が落ちること
経常利益率とは、売上高に占める経常利益の割合のこと。
経常利益には本業以外の損益も加わるので、企業全体としての総合力があらわれます。
これは、本業以外の利益をふまえることで、いかにうまく経営されているかがわかるということ。
ファクタリングを使ったオフバランス化は、この経常利益率の低下を招きます。
その理由は、ファクタリング手数料が利益を圧迫するから。
上記と同じ条件の場合、どれだけ利益が減っているか見てみましょう。
- ファクタリング利用時の利益:360万円
- 銀行融資利用時の利益:400万円
このようにファクタリングを使うことで40万円の利益が減っています。
これに連動して経常利益が落ちることを把握しておかなければ、決算のときなどに困ってしまうかもしれません。
ファクタリングを使うときにはROAや経常利益率への影響をふまえて検討しましょう。
【まとめ】ファクタリングの仕訳をマスターして本業に注力しよう!
最後にファクタリングの仕訳について、総まとめしておきましょう。
- ファクタリングをした際につかう勘定科目は未収金・売上債権売却損
- ファクタリングにおける消費税の扱いは、譲渡代金・手数料ともに非課税
- ファクタリングにおける仕訳は以下の3段階で考える
① 売掛債権が生じた際の仕訳け方
② ファクタリング契約時の仕訳け方
③ 売掛債権譲渡金の入金時における仕訳け方 - ファクタリングはROAを改善する反面、経常利益率を低下させる
ファクタリングは、いざというときに非常に役立つ資金調達法。
それだけにあとから、「仕訳はどうしたらいいんだろ…?」と悩んでしまうこともしばしば。
慌てて会計処理をしたり本業に支障が出たりしないためにも、ファクタリングの仕訳け方を把握しておくと役立ちます。
この記事を参考に、ファクタリングにおける仕訳をサクサク進めてくださいね。